「私は、きつと、佳い作家に」
翌年1月28日付の手紙は4メートルの巻紙に毛筆でつづられている。「芥川賞は、この一年、私を引きずり廻し、私の生活のほとんど全部を覆つてしまひました。(略)私は、きつと、佳い作家に成れます」として、文芸誌に発表した4編の近作の名前まで記した。重ねて「こんどの芥川賞も私のまへを素通りするやうでございましたなら、私は再び五里霧中にさまよはなければなりません。私を助けて下さい。佐藤さん、私を忘れないで下さい。私を見殺しにしないで下さい」と懇願した。しかし、太宰が芥川賞を受賞することはなかった。
この2通の間の時期(35年8月12日付)の書簡は、自らの訪問の許可を請い、その日時を尋ねるはがき。
書簡の全文は、今年10月発売の「佐藤春夫読本」(勉誠出版)に掲載されるほか、11月には佐藤春夫記念館(和歌山県新宮市)での展示も予定されている。