コツコツと書きためたシノプシス。その主人公となったのは、地元の役所に勤める若い女性、みゆき。幼い頃に母親を亡くしたみゆきは農業を営む父・修とともに暮らしてきた。しかし、震災により生活は一変する-。
原発事故による汚染で田畑を奪われた修はパチンコに明け暮れ、みゆきは週末だけ高速バスで東京に通い、デリヘル嬢となる。
みゆきがデリヘルを始めたのは、金銭的な理由ではない。《ただ、少し現実を忘れられる所が欲しかった。他人といたかった、私を知らない誰かと。私も知らない私と。》
「事実として確認したわけではないけれど、震災以降被災地から東京に通ってデリヘルをしている子がいる、と聞いて。阪神淡路大震災のときも同じような噂がありました。そういう噂が立つということは、人々の中に『おカネだけではないものが彼女たちを動かすのでは』という気持ちがあるからなのではないでしょうか」