一度は背を向けた故郷に、寄り添いながら書き上げた作品。行きつ戻りつしながら、それでも少しずつ歩きだそうとするみゆきや修たちの姿が胸を打つ。「ナーバスなテーマだから、地元の人からは『ふざけるな』って言われてしまうかもしれないという怖さはもちろんある。でも、“フクシマ”に生きている人の『ここが好き』という思い、『いつか田んぼをもう一度作るんだ』と頑張っている人の『お米が好き』という純粋な思いに勇気づけられるんです」
記号としてではない、等身大の故郷が、ここにある。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■ひろき・りゅういち 1954年、福島県郡山市出身。ピンク映画を経て、94年サンダンス映画祭で奨学金を獲得し、米国に留学。2003年、寺島しのぶさん主演「ヴァイブレータ」でヨコハマ映画祭監督賞など数多くの賞を受賞。09年「余命1ケ月の花嫁」が大ヒット。最近の作品に「ストロボ・エッジ」など。
「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一著/河出書房新社、1400円+税)