《ある夏の日、時子は、自分が8歳まで父親と暮らしていた上田市の山小屋で一人の少年と出会った。放置され空き家となっていたこの山小屋に勝手に上がり込み、学校の授業をサボって静かに絵を描く日々を送っていた高校生の陽平(泉澤祐希)だ。陽平は、父、正一(田中隆三)が営む材木店の従業員で、兄のように慕っていた和茂(植木祥平)が山で死体となって発見されて以来、周囲に心を閉ざすようになっていた。近くの山奥へ山猫を探しに出かけたまま帰らぬ人となった父を持つ時子は、陽平に親近感を抱き…》
心の傷忘れていい
ともに喪失感にさいなまれる時子と陽平は、山小屋でともに静かな時間を過ごし、言葉を交わすことで、少しずつ心が癒やされていく。木下の場合、心の傷や大失敗といった思い出したくもない過去に対しては、どうけじめをつけてきたのだろう。「『失敗を続けること』が大事だと思います。1回の失敗だけでは、ネガティブな気持ちに囚われてしまう危険性があります。でも、いくつも失敗すれば、1つぐらい成功も経験できるでしょう。失敗を重ねれば、自分に自信を持つことにもつながります。何かに挑戦しないことの方がもったいないですよ。失敗したときは一時的につらい思いをしても、後になって絶対に失敗から学べることがあるわけですからね」。念願の女優デビュー後、数々の修羅場を体験し、大きな役をつかんできた木下が自然に身につけた生き方でもある。