伝統の味 鴨なんば、衣笠丼
実は京都とそばは禅文化を通じ密接な関わりがある。お寺では数々の行事の折に「点心」としてそばをいただくのが習わしで、尾張屋でも江戸時代から寺院にそばを納めていたそうだ。
温かい「鴨なんば」は和歌山県産の合鴨ロース肉が3枚。九条ネギをたっぷり散らしている。利尻昆布にウルメ、メジカ、さば節などから取っただしは京らしい淡い色目。15代目当主が吟味して作ったという伝統の味を変えずに継承するという味わいは、奥行きがありながらしみじみとした味を醸し出す。
毎日、挽き立てのそば粉を使って打たれるそばを一口すすれば、つるんとした食感と風味が口の中にふわっと広がる。
また、甘辛い薄揚げと九条ネギをふんわりと卵で閉じた「衣笠丼」。
「京都の衣笠山にうっすらとかかる雪に例えられた、などいろいろといわれはありますが、安価な具材を手軽においしく、なおかつおなかいっぱいになる、という始末の心から生まれた、まかないが始まりではないでしょうか」と岡本さん。
京都の丼は、七味ではなく山椒をふりかけていただくのが通。味の変化を楽しみながらも、ピリッとした辛さで食材の味を消してしまわぬようにいただくのが京風だそう。