映画「ニューヨーク_眺めのいい部屋_売ります」(リチャード・ロンクレイン監督)。公開中(スターサンズ提供)。(C)2014_Life_Itself,LLC_ALL_Rights_Reserved【拡大】
エレベーターがある別のアパートに引っ越そうと決心したルースはアレックスを説得し、不動産エージェントの姪、リリー(シンシア・ニクソン)に頼んで今住んでいるアパートを売りに出すことにした。老いたドロシーがヘルニアの手術を受ける日、購入希望者に部屋を見せる内覧会を行うことにした。早朝から部屋を見に来る風変わりなニューヨーカーたちで内覧会は盛況、一方で夫婦は新聞の不動産情報を見ながら新居候補の内覧会に出かける。ニューヨークの街はタンクローリー事故から発展したテロ事件に振り回され騒がしく、不動産の値段までが事件の影響を受けそうなほど人々は正気を失っていた。
テレビドキュメンタリーやドラマシリーズ、コマーシャルでも腕を鳴らした、リチャード・ロンクレイン監督(69)の堅実な演出力が輝いている。人種差別と偏見に満ちた時代に結ばれた夫婦の愛は今も変わらない。意見の相違があれば相手の話を聞く、間違いを認めて謝る、感謝の気持ちを伝える、といったコミュニケーションの基本を大切にしながら暮らす聡明な夫婦像が心に染みる。何よりも妻ルースを見つめる夫アレックスの視線がたまらない。フリーマンの瞳の奥からあふれる慈しみのまなざしに涙がこぼれそうになるほどだ。