作家の倉本聰(そう、81)が、拠点とする北海道・富良野を舞台に開拓農家の歴史を描いた「屋根」を、1~3月にかけて全国巡演する。7年ぶりの再演で、この間に起きた東日本大震災と原発事故などの事象も踏まえて内容を一部改訂。経済成長の陰に埋もれていく地方から、本当の幸せとは何かを訴える。倉本は「遺作のつもりで頑張る」と話しており、演出家としては最後の仕事になるという。
「屋根」は倉本の作・演出。大正時代の末、公平としのの夫婦は子だくさんに恵まれる。太平洋戦争を経て戦後、高度経済成長期に子供たちは都会へ出ていき、残された夫婦は古着を裂いて縄をなう。2001年初演。倉本が率いる演劇集団「富良野GROUP」による上演で、24日までは富良野で公演中だ。
倉本は1977年に富良野に移住。当時、廃屋を歩いていた経験から今回の作品が生まれた。「中に入ると夜逃げなど、家を捨てた状況が見えてくる」。経済発展の陰で農村の人口は減り高齢化が進む。作品の背景には、消費社会の東京が基準になった現在の日本に対する怒りがある。原発事故で故郷を離れざるを得なかった被災地の人々の姿も重ねた。「ITで食べ物は作れないのに、農村がないがしろにされている。日本の基幹産業を追いながら、使い捨てにされていく棄民の話でもある」