映画「ディーパンの闘い」(ジャック・オディアール監督)。2月12日公開(ロングライド提供)。(C)2015_WHY_NOT_PRODUCTIONS-PAGE114-FRANCE_2_CINEMA【拡大】
どの映画をみようかと、選ぶ基準はいろいろある。監督、俳優、原作、ロケ地、受賞歴など、その時々の好奇心や気分によって作品を決めて劇場に向かう。私にとってジャック・オディアール監督(63)は、万難を排して劇場に向かわせる強烈な存在。静かで力強くて残酷で、だから繊細で優しく描かれる「独特で容赦ない世界」に遭遇したくて劇場に向かうのだ。
強烈な体験に呆然
「ディーパンの闘い」という邦題を見てニヤッと笑ってしまった。一貫して生きるために闘う人間像を描き、「生きるとは闘いなのだ」と見せてきたオディアール監督作品に「闘い」という言葉がついた。どれほどすさまじく闘う生きざまなのだろうと期待を膨らませた私は、クライマックスでは息が止まるほどスクリーンに引き寄せられた。映画を見ているということを忘れさせる強烈な映画体験に心が震えしばらく呆然(ぼうぜん)としていた。