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【ヤン・ヨンヒの一人映画祭】フィクションだけどリアル過ぎる現実 (3/4ページ)

2016.1.15 13:00

映画「ディーパンの闘い」(ジャック・オディアール監督)。2月12日公開(ロングライド提供)。(C)2015_WHY_NOT_PRODUCTIONS-PAGE114-FRANCE_2_CINEMA

映画「ディーパンの闘い」(ジャック・オディアール監督)。2月12日公開(ロングライド提供)。(C)2015_WHY_NOT_PRODUCTIONS-PAGE114-FRANCE_2_CINEMA【拡大】

  • ヤン・ヨンヒ(梁英姫)監督(ワハハ本舗提供)

 観客が試される作品

 フランス・パリ郊外が舞台だが、映画には、おしゃれなカフェもエッフェル塔もフランスパンさえ出てこない。コミュニティーさえ形成されていない、根なし草どころか、空気の中に舞う粒子のような存在である移民たちの姿は、今のフランス、ヨーロッパの実情を如実に見せる。実際、パリの地下鉄の駅でも、ルーブル美術館の外でも、ポンピドーセンターの周りでも、ミッキーマウスの電飾をつけたような多くのディーパンたちとすれ違う。

 フィクションである。同時に、テロと空爆という報復の連鎖が繰り返される中で生まれる膨大な数の難民を取り巻く、まさに世界が直面する今の話である。映画の中の話とはいえないほどにリアル過ぎる現実なのだ。世界を知るとは難民の数を知ることでも、犯罪率の統計を知ることでもない。過酷な状況の中で生きる彼らの具体的な日々を、心のひだを知ることではないだろうか。理解するには、私たちにそれ相当な知性(知識ではなく)と想像力が必要だろう。まさに観客が試される映画でもある。

「難民」ではなく「個」であること

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