映画「ニューヨーク_眺めのいい部屋_売ります」(リチャード・ロンクレイン監督)。公開中(スターサンズ提供)。(C)2014_Life_Itself,LLC_ALL_Rights_Reserved【拡大】
懐深い知性とユーモア
また、レストランで画廊主になる友人夫婦の息子とアレックスの作品について語り合うシーンで、ルースの媚びない態度が素晴らしい。芸術作品を市場のためのビジネスツールとして扱う若造オーナーに、アーティストである夫の仕事は「客が望むモノを描くことではない」と毅然(きぜん)と断言するルースが頼もしい。その会話を聞いているアレックスの横顔もリアルだ。ウォール街に牛耳られているようなニューヨークが未だ魅力を失わないのは、こういうアーティストスピリッツが息づいているからだろう。
夫婦の歴史をひもときながら「家」とは? 「暮らす」とは? 「生きる」とは?を抜群のさじ加減で見せる大人の映画である。懐が深く知性とユーモアに満ちあふれながらも、どこまでもさりげないせりふで埋まった脚本がベテラン俳優の名演を支えている。戦争と難民、暴力や差別を劇的に描いたつらく苦しい映画があふれる中、まさに深呼吸をくれる癒やしの一作と言いたい。