山あいの岩間から湧き出る清泉は一年を通して水温が変わらない。夏でも水につけておいたウリが割れるほど冷たいことから「瓜割の滝」という名前がつけられた。自然の中に湧き出る水を手ですくって口に含むと、爽快感が身体中に染みわたり、命を洗われた気分だ。ここの水は「名水百選」にも選ばれている。
≪残った宿場町 古き暮らしを体験≫
街道沿いにつくられた狭い水路に、豊富な量の澄んだ水が流れていく。道の両側に1キロ以上にわたって立ち並ぶのは、昔ながらの古民家だ。
国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている福井県若狭町の「熊川宿」。安土桃山時代から江戸時代にかけて若狭湾で水揚げされた魚介類を京の都へと運んだ「鯖街道」の宿場町で、足を踏み入れたとたん、時間の流れが変わった。
私たちは、熊川宿の中心にある町家「旧逸見勘兵衛家」に体験宿泊させてもらうことにした。伊藤忠商事の2代目社長、伊藤竹之助氏の生家で、1995(平成7)年に町の文化財に指定された。旅館ではないため、仲居さんなどはいない。宿の運営や接客に当たるのは、地域のボランティア団体「熊川宿おもてなしの会」の人たちだ。夕食と朝食は、地元産の旬の食材を使った田舎料理でもてなしてくれる。