「天草へ行ったら、崎津まで足を延ばしてみるといい」
東京のカトリック教会の神父にそうすすめられ、訪ねたのは、もう25年も前のことだ。雑誌の取材で隠れキリシタンについて調べていた時代で、当時は長崎県の島原から船を使ってのアプローチだった。それに比べ、今はこんなに近くなったのかと感動すら覚える。飛行機だと福岡から35分、熊本からなら20分で着いてしまうのだから。
保有するわずか1機の小型プロペラ機をやりくりして毎日10便を飛ばすのは、熊本県と天草地域2市1町などが出資する第三セクターとして、2000年3月に運航を開始した天草エアライン。ボディーを親イルカに、エンジンを子イルカに見立てた青いペイントの「親子イルカ号」でファンが急増中だ。
機内に入ると、各座席に社員たちの手づくりによるクリアファイルの機内誌が置かれ、社内に5人いる客室乗務員たちが顔写真付きで自己紹介されている。そんな社員たちとの“距離の近さ”が、天草エアラインの一番の特徴だろう。サービスの一つ一つに手づくり感がただよい、乗客との記念撮影にも満面の笑顔で応じてくれる。各便に乗務するのは1人だけだが、フライトがない客室乗務員は保安検査場業務を手伝うなど、乗客との接点は多い。到着した天草空港では、社長や専務までが預け入れ手荷物の積み下ろしに駆り出されていたのには驚いた。「ようこそ天草へ」「どうぞ楽しい旅を!」