「これは?」
「こんにゃくの空揚げです。若狭だけの味ですので、召し上がってみてください」
口に入れると、ニンニク醤油(しょうゆ)の香ばしさが広がる。歯応えもあり、絶品だ。
早めの夕食を済ませたあとは、ボランティアガイドと一緒に街道を歩いてみた。
名物の葛まんじゅうを売っている茶処がある。手まりをつくっている店がある。その数軒先の縁台でのんびり風に当たっている老人と目が合った。築170年の古民家に住む兼田誠之助さん(80)で、木工のおもちゃなどを一品一品、手作りして観光客らに販売しているそうだ。
昔懐かしいやじろべえが、1つ100円。左右の重しのバランスが絶妙で、指先に乗せると、街道を抜けてゆく風にやさしく揺れた。(文:作家、航空ジャーナリスト 秋本俊二/撮影:フォトグラファー 倉谷清文/SANKEI EXPRESS)