軽快に走るトヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」【拡大】
タウンユースのみならず長距離ドライブにもオススメ
2時間ほど試乗した感想としては、運転中の感覚はFCVだからといって特別、ほかのクルマと変わらないということだ。FCVは発電機(燃料電池)を積んでいるという部分で、蓄電池を搭載する電気自動車(EV)とメカニカルな違いはあるが、ドライビングフィールに関しては基本的にEVと同じだ。ガソリン車と比較しても同じ使い勝手で違和感なく走れるので、容易にFCVに乗り換えることができるだろう。
ミライの航続距離はEVよりはるかに長い約650キロ。静粛性と操縦安定性が高く乗り心地も抜群なので、タウンユースのみならず長距離ドライブにも向いている。しかも、水素の充填時間はたった3分なので、いつでも気軽に補給できる。ただ、クルマの性能を引き出して走りを楽しむようなドライバーズカーではないと付け足しておく必要がある。ミライは元々そこに主眼を置いていないのだ。その辺は今後の展開に期待しよう。
決してハードルの高い乗り物ではない
ミライを運転しながらなんとなく、FCVが当たり前に走っている未来の光景が想像できた。もちろん普及させるにはまだまだ時間が掛かるだろう。水素ステーションなどインフラを整備して、クルマのラインアップを増やし、車両価格をもっと下げる努力が必要だ。クルマの見た目も、ミライはどちらかといえばシニア向きのような気がするので、若い世代にも支持されるデザイン性が欲しいところだ。
以前、ミライの開発責任者、田中義和氏に“今後作ってみたいFCV”について尋ねたところ、「いまは皆さんに多く選んでいただけるクルマを優先すべき」と前置きした上でこんな事を語っていた。「自分はクルマが好きなので、乗って楽しいものがいいですね。スポーツカーなどスペシャリティーカーは憧れます」。
ユーザーの趣味や生活スタイルに合うモデルを手に届く価格で提供できれば、選択肢が広がることでおのずと台数も伸びるはず。FCVというクルマ自体は、ガソリン車やほかのエコカーと比べても決してハードルの高い乗り物ではないと感じた。水素社会の実現に向けてFCVの開発を牽引するトヨタ。今回、ミライを試乗してFCVの可能性を感じるとともに、今後の水素社会の発展がとても楽しみになってきた。
■ミライのスペック
FCスタック形式:FCA110(最高出力:114kW/155PS)
モーター形式:4JM(最高出力:113kW/154PS)
最大トルク:335Nm/34.2kgfm
燃料種類:圧縮水素
駆動用バッテリー:ニッケル水素電池
全長×全幅×全高:4890×1815×1535mm
車両重量:1850kg
ホイールベース:2780mm
乗車定員:4名
駆動方式:前輪駆動