最初に向かったのは神奈川県のほぼ中央部に位置する宮ヶ瀬湖だ。湖の周辺は高低差があって、カーブが連続する人気のドライビングスポット。路面が凍結していないことを確認してコーナーを攻める。足回りが硬いのでロールは少ない。ハンドリングは非常にシャープで素直。ステアリングは変に軽くないので、操縦感覚が非常につかみやすい。FFでもフロントヘビーな印象は薄く、イメージどおりに理想のラインをトレースできるのだ。SUVでも走りは十分スポーティー。素直に「このクルマは楽しい!」と思える。そして、ここでも高速道路でも感心したのがダンパーの性能だ。路面の凹凸や継ぎ目からくるショックを一発で吸収して不快な揺れをカット。ダンピングの効きは実に秀逸だった。
翌日は丹沢山地に舞台を移してテストラン。加速力や回頭性はどの道を走ってもやはり素晴らしい。FF車でもこれだけ走りを楽しめるのなら、BMWが目指している方向性は間違っていないと納得させてくれる。FFレイアウトを採用しても走行性能を犠牲にせず、小型車の弱点である居住性や機能性を高めることができれば、こんなに理想的なクルマはないのだ。
このクルマに「目的地」は不要
ではX1に欠点はないのか。いや、そんなことはない。まず、電動のテールゲートは人の存在を感知しないので、体に触れても止まらない。閉めるときに、知らぬ間に隣に子供がいたら危険だ。内装の木目パネルは若者には受けが悪いかもしれない。300万円台から購入できるからこそ、若年層を意識したクルマ作りも大切だ。あと、BMWは運転している本人が楽しめるドライバーズカー。逆に言うと、同乗者は同じ気持ちを共有していない可能性がある。今回の試乗でも何人かの同乗者が「乗っているだけだとちょっとつまらないかな…」と口にしていた。できれば、もう少し“心を揺さぶる一体感”が車内全体に生まれるようなSUVを目指して欲しい。