直訳すれば「電線による飛行」。金属製のロープ(ケーブル)と滑車、金属棒などで操縦桿の動きを各舵面に伝えていた従来方式から、電線(ワイヤ)を使いモーターなどで各舵面を動かすハイテクが導入された。これによって操舵にコンピューターを介在させることが可能となり、戦闘機設計上の革命的な変化につながった。
戦闘機には機敏な動きが必要だが、設計時にそうした運動性能を重視し過ぎると、まっすぐ飛ぶだけで一苦労になる。かといって大型旅客機のように安定性を求めると、動きは鈍重になる。レース用バイクと観光バスの良いとこ取りをして1台にまとめるのは無謀だ。しかしコンピューターが無理難題を可能とした。人間の反射神経では乗りこなせない不安定で過敏な機体を、コンピューターの補正で無理矢理に飛ばすのだ。
ただし、膨大なプログラム作成などで開発費は高騰する。軍縮で戦闘機の必要数が激減したことから、量産効果による研究開発費の回収も難しい。もはや一国で新戦闘機開発の予算を工面できる国は、世界に数えるほどしかなくなった。
そんな状況でF-35計画はスタートした。F-22より安く、かつ次世代戦闘機が必要ながら単独開発できなくなった欧州など各国の要求を取り入れた戦闘機。それは1機種で空軍と海軍、さらに海兵隊でも使える「万能戦闘機」を生み出そうとの野心的なプランとなった。