爆弾を全部落とせば戦場を離脱するしかない数多の攻撃機と異なり、A-10は戦場上空に比較的長時間滞空して、大口径機関砲で拠点をしらみつぶしにできるのだ。
空軍の理想の地上攻撃は、地上砲火が届かず、敵地上兵からは見えない高さからレーザー誘導やGPS誘導で爆弾を落とすこと。
しかし陸軍の立場では、こうした援護は心許ないとの声が一般的だ。陸兵の手に負えない強大な敵火力を、陸軍の無線で密に連絡を取りながら繰り返し攻撃してくれるA-10こそ“頼りになる騎兵隊”なのだ。
空飛ぶ戦車
A-10は1967年の開発開始時点から、最強のCAS専門機を目指した。
当時の仮想敵のワルシャワ機甲軍(ソ連軍)が運用していた主力対空砲の23ミリ弾に耐えられるよう、コックピット(操縦席)はバスタブ状に組んだチタン合金の装甲板で防護。エンジンは胴体後部に外部ポッド式とし、被弾時の胴体への影響を最小限にするとともに、主翼そのものがエンジン防護の役目を果たす構造とした。