「クーペやスポーツタイプのFモデルがレクサスの商品に追加されたので、クルマ好きという顧客層も格段に増えました。これまではセダンのラインアップが多く、他メーカーと比べると選択肢が少なかった面があります。この数年間で充実したのは大きいです」(宮永氏)
加えて、レクサスの売り上げ全体をけん引しているのがSUVだ。もともと高級クロスオーバーSUVというセグメントを切り開いたのが「RX」で、そこから他社が追随してきたという歴史がある。現在は、RXよりも少し小型の「NX」、そしてRX、LXのSUVモデルでレクサスの全販売台数の約6割を占めるほどの主力となっている。
トヨタは今、「もっといいクルマづくり」という理念を掲げている。この理念はレクサスにとっても変わらない。その上でレクサスが求めるのは熱狂的なファン作りだ。
「よく福市(得雄レクサスインターナショナルプレジデント)が言うのは、『このクルマを本当に愛してくれる人が買ってくれればいい』。例えば、スピンドルグリルは深海魚みたいで嫌だという人もいますが、一方、このデザインに惚れて買ってくれる人もいるのです。とりわけラグジュアリーブランドは、誰もが好きになってくれる中庸なデザインではなく、好き嫌いがはっきり出るようなものでないと駄目だと思っています。そうでないと熱狂的なファンは生まれません」(宮永氏)
今後さらに販売台数を7万、10万と伸ばしていくのではなく、レクサスというブランドを愛してやまないファンを一人でも多く作っていくことの方が優先度は高いという。顧客の数よりも質。それこそがライバルメーカーとの競争に勝ち抜くための近道でもあるのだ。