トールワゴンで気になるのがコーナリング時の安定性だが、走行場面に適した速度で丁寧に運転すれば全く不安はない。ステアリングホイールは非常に軽い印象で、ハンドルをスッと切ると、これがなかなか気持ちよくターンする。上背があるとカーブを曲がるときに車体が不安定になりやすいが、多少スピードを上げてもロール(重心が左右にかかることで発生する横方向への傾き)は特に感じなかった。もしかすると、燃料タンクを車体の中心に近い前席直下に配置したことで、安定性向上に貢献しているのかもしれない。ただ、この日は関東地方に春一番が吹くなどトールワゴンユーザーにとって苦難の一日に。運転中に何度も横から押されるようにグイグイと煽られたのには正直参った。
トランスミッションは無段変速オートマチック(CVT)を採用しているので、走行中はとても滑らか。変速ショックがないので、感覚的にはゴーカートに近い。14インチタイヤを履く足回りは程よい硬さがあり、上背とのバランスを重視してか想像以上に引き締まった乗り味だ。少々荒れた路面の上でもしっかりと足を使ってショックをいなしながら走るので、乗り心地はとってもいい。
狭い道もスイスイ
試乗中に「運転しやすいなあ」と実感したのが、やはり軽としてのコンパクトさが最大限に発揮されるときだ。車線変更や路地に入ったときのように、狭いスペースを縫って走るときは「正直、このサイズでよかった」と安堵感を覚える場面が多々あった。道を間違えても小回りが利くので、簡単に方向転換もできる。途中訪れた東京下町の谷根千エリアでは、軽しか通れない細い道や、軽しか止められない自宅駐車場がたくさんある。マイカーに高い走行性能を求めないユーザーであれば、軽に乗っているからこそ享受できる生活のしやすいカーライフを実感できるだろう。強風の“体当たり”を幾度となく浴びたとはいえ、背の高さをハンディに感じる場面は少なくとも試乗中にはなかった(ただしトール系の場合、機械式駐車場はいかなるときもアウトです!)。