ATSがメルセデス・ベンツのCクラスやBMWの3シリーズ、CTSがEクラスや5シリーズと同じクラスなら、今週の主役のCT6はSクラスや7シリーズといった高級セダンの代名詞に対抗するモデルだ。外形寸法もこれらライバルとほぼ同サイズの全長5190ミリ×全幅1885ミリ×全高1495ミリで、ホイールベースは3110ミリ。車両価格は998万円(税込)だ。
大きなボディを軽々と…
今回の試乗は、GMジャパンの本社がある東京・品川を出発後、5車種を乗り換えながら富岡製糸場などの観光地を回り、再び都内を目指すといった一日がかりの行程だ。筆者がCT6を運転したのは、関越自動車道の高坂SA(埼玉県東松山市)から群馬県の甘楽町(かんらまち)にある「甘楽ふるさと館」までの約75キロの道のり。遠足前夜の子供のように胸を躍らせながら運転席に収まった。
すでにエンジンがかかった状態で乗り込んだのだが、ここは敢えていったんオフにして再起動させる。スタートボタンを押すとカラー液晶のインパネが鮮やかに浮かび上がり、大きな車体をほとんど振るわせることなく静かに起動した。静寂な車内にはラグジュアリーな雰囲気が漂い、ただ座っているだけでも大らかな気持ちになってくる。日本で販売されるキャデラックは米国同様、すべて左ハンドル。左手でステアリングを握り、右手でハンマー型のシフトレバーをDレンジに入れて高坂SAを出発した。
いきなり高速道での走行となったが、さっそくCT6の高いパフォーマンスを目の当たりにすることとなった。まず驚いたのが、その大きな見た目からは想像できないほど軽々と車体を動かすエンジンパワーだ。レスポンスが鋭く、ぐいぐいと加速していく。「アメ車はエンジンがバカでかいんでしょ…」と思われるかもしれないが、CT6は3.6リッターV6自然吸気エンジンを搭載している(えっ、十分でかいって?)。最高出力は250kW(340PS)/6900rpm、最大トルクは386Nm(39.4kgm)/5300rpmというハイスペック。ボディ構造は11種類の素材を組み合わせることで、このサイズの全輪駆動車(AWD)にしては軽い1920キロという軽量化と高剛性を実現し、軽快でシャープな走りに大きく貢献している。