快適な高速走行
パワーだけではない。8速ATを組み合わせることで滑らかなエンジンフィールと加速感を手に入れており、その走りはシルクをなでるようにスムーズ。アクセルを踏み込んでも荒々しさは微塵も感じさせず、自然吸気エンジンがどこまでも上品にクルマを加速させる。もちろん、AWDがもたらす加速時の蹴り出しや走行時の安定感も抜群だ。
時速100キロで走行しても、車内の静粛性は高いレベルで保たれている。エンジン音、ロードノイズ、風切り音はほとんど気にならない。むしろ静かすぎて、グローブボックス周辺から時折聞こえる微振動が少し気になってしまった。
コンパスのように正確、そしてしなやか
上信越自動車道の富岡インターで一般道に降りて低中速走行を試す。カーブを右に左に曲がりながら目的地の「甘楽ふるさと館」を目指したのだが、ここで感心したのが質の高いハンドリング性能だ。まず、ハンドルを切ったときに、焦点の定まらないフワフワとした“遊び”が全くない。高級セダンに求められるスムーズで当たりの軟らかいハンドリングの中にも、しっかりとダイレクト感があるのだ。コーナーに進入すると、まるでコンパスで円を描くようにきれいにカーブを曲がっていく。低中速度域の走りも実に軽快で、ストレスフリーな走行感覚にどんどんと気持ちがよくなってくる。
足には245/40の20インチタイヤとブレンボ社製のブレーキを履いている。気になる乗り心地だが、キャデラックは磁気の力を利用してサスペンションの減衰力を可変させる「マグネティック・ライド・コントロール」を採用している。走行状況に合わせて足回りを“緩急剛柔”にコントロールする技術で、高速道ではしなやかな乗り心地を、ワインディングなどコーナーを曲がるときは引き締まった足回りでロールを抑える。この技術は多くの高級車メーカーが導入しているが、最初に開発したのは“ハイテク好き”のキャデラックだ。ベンツやBMWと比べると、やはりキャデラックの乗り心地はアメ車らしく全体的にソフトな印象。個人的には、このふわりとしたドライブフィールに高級セダンとしての優雅さを感じた。
取り回しもボディサイズに慣れてしまえばそんなに苦労はしないだろう。大型車両にしては意外と車両感覚がつかみやすく、障害物に接近したときは警告音とともにシートがブルブルと振動して知らせてくれるので、駐車時などでも安心だ。ただし、やはり狭い駐車場では気を使ったし、場所によっては高さ制限や車幅制限に引っかかることも覚悟すべきだ。