離脱選択で長期金利マイナス幅は「未曽有の領域」へ

英EU離脱問題
投票所に張られた告知を見る男性=23日、ロンドン中心部(ロイター)

 23日の英国民投票で欧州連合(EU)からの「離脱」をめぐる判断がもつれて市場が混乱すれば、リスクを回避しようとする余剰資金が、安全資産とされる日本国債に集中しそうだ。仮に離脱が決まれば、長期金利の指標となる新発10年債利回りのマイナス幅は“未曽有の領域”へ突入し、投資家の資産運用はより厳しくなるとみられる。(藤原章裕)

 同日の10年債終値利回りは前日比ほぼ横ばいのマイナス0・145%。EU離脱が強く意識された16日には一時マイナス0・21%と過去最低水準を更新したが、賭け業者(ブックメーカー)による離脱確率が低下したことを受け、現段階では投資家の警戒感がやや和らいでいる。

 しかし、世論調査では「残留」と「離脱」がほぼ拮抗している。英国民が市場予想に反して「離脱」を選択した場合、投資家が一気にリスク回避に動く可能性もある。

 「EU離脱が決まると10年債利回りはマイナス0・2~0・25%程度まで下がる(価格は上がる)だろう」

 ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストはこう分析する。

 さらに、安全資産とされる円を買う動きが強まれば、円相場が「1ドル=100円」を突破する恐れもある。日銀に対し、追加の金融緩和で円高抑制を求める声が大きくなりそうだ。市場では、現在0・1%のマイナス金利幅を0・2~0・4%程度に深掘りする案などが取り沙汰されているが、国債利回りの一段の低下が現実味を帯びる。

 実際、1月末に日銀がマイナス金利の導入を決めて以降、市場金利の低下に歯止めがかからなくなっている。黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で「(満期までの期間が10年を超す)超長期債の利回りが想定以上に下がったと思う政策委員がいるかも」と漏らした。

 英国のEU離脱とマイナス金利深掘りの“ダブルパンチ”に見舞われれば、20年債や30年債の利回りまでマイナス圏に沈む恐れもある。現段階で超長期債の利回りはプラス圏のため、安定した運用益を上げられるとみた投資家の買いが入りやすいが、マイナス利回りになれば満期まで保有すると損が出てしまう。

 英国のEU離脱が決まった場合、日銀が手をこまぬいていれば円高・株安を招き、追加緩和でマイナス金利を深掘りすれば投資家の運用先を奪う恐れもある。日銀は難局に直面しそうだ。