1日に消費税率引き上げを決めた安倍晋三首相。1997年に消費税を3%から5%に引き上げて以降、日本経済が低迷したという“トラウマ”が、判断を最後の最後まで迷わせた大きな要因だった。しかし、市場関係者の間では当時と今とでは状況が違うという見方が大勢を占める。足元のビジネスの現場でも、すでに前回とは違った様相をみせているようだ。
「結果的に消費税率引き上げを判断したことで、パフォーマンス狙いだったのではといった批判もでるだろう。だが、総理は本当に悩んでいた」
1997年と同じようなことが起きれば、首相の経済政策の最大の目標である「デフレ脱却」への道は完全に閉ざされる。政権の命運をかけた判断への苦悩は深かったと同関係者は語っている。
実際、97年4月の消費税率引き上げ前の同年1~3月期の実質成長率が2.9%(前期比・年率換算)だったのに対し、4~6月期は3.9%減と急減。駆け込み需要後の反動減が一気に景気を冷やした。以降、長期間マイナス成長が続いた。引き上げ当時の首相だった橋本龍太郎氏は、その後、当時の判断を後悔し、謝罪を繰り返している。