だが、私はもうひとつ別の背景も存在していると考える。実体経済の回復に伴い、株式市場は“金融相場”から“業績相場”へと移行しつつあり、QE3の縮小観測はそれを象徴するものと捉えているのだ。金融緩和によるカネ余りがもたらした過剰流動性相場から、実体経済の回復を反映する上昇相場に転換する日は遠くない。
中国やインドでは楽観視できない情勢が続くものの、アセアン諸国のように堅調なところもある。さらに、今後は先進国が牽引役となることも期待できよう。中国の成長率が2%下がると世界経済に相当なダメージが及びそうだが、米国の成長率が1%上がれば落ち込みを十分に吸収できる。米国や日本は経済規模が大きくて分母も大きいため、0・5-1・0%程度の成長率上昇が世界経済にも強い影響をもたらすのだ。ただし、カネ余りが新興諸国でバブルを生んだ金融相場と比べれば、これから訪れる業績相場にそのような派手さはない。
ともかく、今後は冒頭で挙げたようなさまざまな不安要因が後退していく中で、実体経済の回復に焦点が当たることになりそうだ。米国は日本と違って金利感応度が高く、金融緩和の影響で住宅市場は着実に回復基調を示している。QE3縮小に対する警戒感からマーケットが過剰反応(長期金利の上昇)を示す局面もあったが、それはあくまで一時的な現象にすぎないといえる。