内閣改造の女性抜擢「試練はチャンス」

2014.9.4 07:00

記念撮影に臨む新閣僚と安倍晋三首相=3日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)

記念撮影に臨む新閣僚と安倍晋三首相=3日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)【拡大】

  • 新四役共同会見に臨む谷垣禎一幹事長=3日午前、千代田区永田町の自民党本部
  • 記者会見する山谷えり子拉致問題相=3日午後、首相官邸(蔵賢斗撮影)
  • 内閣改造を終え、記者会見する安倍首相=3日夕、首相官邸(代表撮影)
  • 記念撮影に臨む新閣僚と安倍晋三首相=3日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)
  • 皇居での認証式を前に官邸に入った小渕優子経産相=3日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)

 安倍晋三首相は12月には、来年10月に予定通り消費税率を現在の8%から10%に引き上げるかどうか決断しなければならない。

 「たった2年で計5%も消費税を上げた国なんてないよ」

 首相は日ごろから周囲にこう語り、わずか2年で5%から10%まで一気に消費税率を上げるのは異例だと強調している。また、消費税率上げに熱心な財務官僚のあり方に、こんな感想を漏らしたこともある。

 「彼らは面白いな。日本を将来にわたってどうしようかという将来像は描こうとせず、単年度の財政にばかりこだわる」

 そんな首相と財務相経験者の谷垣禎一自民党幹事長の考え方は食い違うのではとの指摘もある。だが、この点は今週の両者の極秘会談でクリアできたという。首相は周囲にこう語った。

 「突っ込んでいろんな話をしたが、消費税についても谷垣さんは結構ニュートラル(中立的)だった」

 谷垣氏は3日昼、幹事長就任後の記者会見で消費税について「景気情勢もよく見ていかなければならない。大雨、消費の落ち込み、野菜価格上昇などいろんな問題がある」と述べ、首相に歩調を合わせた。

 2日夜には、谷垣氏のグループ「有隣会」の佐藤勉国対委員長、中谷元・元防衛庁長官ら主要メンバーが東京都内のホテルに集まった。翌日に控えた党役員・内閣改造人事に関して協議するためだった。

 話題の中心はやはり「幹事長は誰なのか」。さまざまな下馬評が飛び交ったが、出席していた谷垣氏は一言も口にせず、にこにこしながらじっと話を聞いているだけだったという。

 谷垣氏の幹事長就任に対しては、厳重な箝口(かんこう)令が敷かれ、すでに就任を内諾していた谷垣氏自身も仲間にすら伝えるわけにはいかなかったのだ。

 出席メンバーの一人は、谷垣氏が消費税率引き上げに関する自民、公明、民主各党による「三党合意」の当事者であることから、こんな懸念を口にする。

 「万一、消費税率上げを凍結することになり、それを谷垣氏が黙認したら政治生命に重大な影響が出る。でも谷垣さんのことだから、こんな自己保身的な考えはないんだろうなあ」

 谷垣氏自身は3日の幹事長就任直前、周囲に「自分の政治生命なんて、そんなこと考えちゃいけない」と漏らした。首相は、そういう谷垣氏の人柄も織り込み済みなのだろう。

 中国に太いパイプを持つ谷垣氏の起用が、中国との対話再開に前向きなメッセージとなることも当然、意識しているはずだ。

■「女性議員の星に」

 もう一つ今回の人事で目立つのは、「女性の輝く社会の実現」を掲げ、女性の積極登用を目指す首相が6人の女性を要職に起用したことだ。

 中でも、抜擢(ばってき)人事といえるのが、衆院当選3回の稲田朋美氏を党三役の一つであり、政策をつかさどる政調会長に起用したことだ。

 「稲田さんを女性議員の星にしたい」

 首相は先月初旬、当時は行政改革担当相だった稲田氏について周囲にこう語っていた。また、改造で現職から外すことになった場合でも「きちんとメーンテーブルに据える」と明言した。稲田氏を将来の女性首相候補の一人として扱い、経験を積ませて育てたいという考えからだ。

 弁護士だった稲田氏を保守派の論客として見いだし、衆院選への立候補を要請したのは首相自身だった。また、日ごろから「もっと経済界とも付き合い、視野を広げた方がいい」などとアドバイスしてきた。

 ただ、当初から政調会長など党三役に就けるつもりだったわけではない。自身も稲田氏と同じ衆院当選3回のとき、小泉純一郎首相(当時)に幹事長に大抜擢され苦労も経験しただけに、8月初旬ごろには周囲にこう語っていた。

 「三役になれば官僚ではなくて党と先輩政治家を使わなくてはいけない。政調会長になっても、党の各部会長と当選回数が一緒だとやりにくい」

 それが一転、政調会長への起用となったのは「スターをつくるチャンスだ」と考え直したからだ。あえて稲田氏に「試練」を与え、政治家として成長させたいという狙いがあるのだ。

 同様に、将来の女性首相候補と目される40歳の小渕優子経済産業相についても、首相は早くから入閣させる意向で、小渕氏の周囲にもそう伝えていた。

 首相は一昨年12月の第2次安倍内閣発足時にも、小渕氏に入閣を要請していた。このときは「ありがたいが、もっと勉強してからお願いしたい」という小渕氏側の考えで、結局、閣僚ではなく財務副大臣に落ち着いた。

 その小渕氏を、世論が分かれる原発再稼働問題も所管する経産相に充てたのは、首相が小渕氏は重責を担えると判断したためだ。

 盟友的な存在である高市早苗総務相や山谷えり子拉致問題担当相のほか、43歳の有村治子女性活躍担当相を初入閣させたのも、政治家として今後の飛躍を期待してのことだろう。

 「(6人の女性は)いずれも重要政策を担うポストだ。十分そのポストに就く能力のあるメンバーだと確信している」

 首相は記者会見でこう胸を張った。彼女たちがどこまで活躍できるかどうかで、今回の改造の成否が問われる局面もありそうだ。

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