小渕優子前経済産業相の後任に決まり、会見する宮沢洋一氏=21日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)【拡大】
小渕優子前経済産業相の突然の辞任を受け、宮沢洋一氏が21日、後任の経産相に就任したが、この閣僚交代劇が、法人税率引き下げ議論に微妙な影響を与えかねないと懸念されている。法人税実効税率の引き下げをめぐっては、税収減の穴埋め策について財務省と経産省の意見が対立。旧大蔵省出身の宮沢氏は財務省に主張が近いと目されている。その宮沢氏が経産省のトップに就いたことで、年末の税制改正議論が財務省ペースで展開されることを警戒する声もあがる。
「財務省主税局自民党出張所だから…」
ある政府高官は、自民党の税制調査会幹部を長く務めた宮沢氏を、皮肉混じりにこう評する。
政府は現在35%程度の実効税率を来年度からの数年で20%台に下げる方針。ただ、実効税率の1%の下げで約5千億円の税収減になることから、財政再建を重視する財務省は代わりの恒久財源をしっかり確保したい考えだ。具体的には、赤字企業も課税される「外形標準課税」の強化などが財源の最有力候補だ。
これに対し、経済成長に重点を置く経産省は実質的な税負担の軽減を求める経済界の要望に沿い、実効税率の引き下げに伴う税収の穴を、企業に対する別の増税で埋めることには慎重姿勢を崩していない。
宮沢氏は21日、就任後の初の記者会見で、法人税改革に関し「(安倍晋三)首相には『攻守がかわった』と申し上げた」と述べ、これまでとは立場が変わったことを強調。外形標準課税の強化も慎重に検討する構えを示した。
宮沢氏は本当にスタンスを変えたのか-。企業にとっては今後の税負担のあり方を大きく左右するだけに、しばらくはこの新閣僚の言動から目が離せそうにない。(本田誠)