李氏にとって、最重要指標は不動産市況の動向だ。都市部の不動産価格が下降に転じた一昨年以来、中国本土への依存度を引き下げる決断を行ったもようだ。中国の政治的な影響力が一段と増す香港からも、じりじり退く動きまで見せ始めた。
他方で、長江実業の発表から11日後、伊藤忠とCPが行った発表に今度は逆の意味で市場は驚かされた。CITIC関連の株式の約20%を両社で取得するというのだ。その半分の約6000億円を出資する伊藤忠は、最終利益で年700億円程度を見込むという。
伊藤忠の岡藤正広社長は会見で、「(CITICの)企業価値はもっと上がる。5年で売っても十分に回収できる」と巨額投資の効果に自信を示した。
ただCITICに対する国際社会の評判はあまりよくない。1979年に本格稼働した中国の改革開放路線で、当時、最高実力者だったトウ小平氏が深刻な外貨不足に対処するために認めた国有企業。初代理事長で、後に国家副主席まで上り詰めた栄毅仁氏とその一族が君臨した。コーポレートガバナンス(企業統治)や経営の透明性などの面からみて、CITICがどこまで国際標準を満たしているかは疑わしい。