では、なぜ1980年代に再び「r」が「g」を上回るようになったのか。ピケティはその理由としてロボットやIT(情報技術)の活用(生産の自動化、効率化)を指摘している。
ロボットやITの発達は、人間の仕事を奪い、賃金も消費も抑圧。「g」も伸びない。一方、資本はロボットやITによって労働コストを抑制し、「r」を伸ばした。
また、ピケティは世襲の復活にも警鐘を鳴らしている。富裕層が資産を子孫に継承することで、格差は拡大。しかも、その傾向は19世紀の状況に戻りつつある。
一方、ピケティは「g」を伸ばすような技術革新、そうした技術革新に関与できるような技能や知識を身につける教育が格差是正に有効と指摘している。また、格差拡大を防ぐために、資本に対してグローバルな累進課税を課すことを提唱している。
格差拡大が社会問題化している米国では、自分が格差にあえいでいるグループに属するという人々はピケティを熱狂的に支持し、難解な専門書のベストセラーにつながった。ピケティの影響は大きく、既に「ピケティ革命」「ピケティ現象」という言葉も飛び交っている。
伝統的なマクロ経済政策(財政金融政策)を信じられないほど大規模に行うことに執着している日本。世界が考え始めているダイナミックな大転換に取り残されつつある。
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【プロフィル】大塚耕平
おおつか・こうへい 名古屋市出身。早稲田大学政経学部卒、同大学院博士課程修了(学術博士、専門はマクロ経済学)。日本銀行を経て2001年から参議院議員。内閣府副大臣、厚生労働副大臣を歴任。現在、早稲田大学と中央大学大学院の客員教授。著書に「公共政策としてのマクロ経済政策」など。