日銀は、賃金や物価の上昇分より年金額の伸びを低くする「マクロ経済スライド」が平成27年度から初めて導入されることなどを踏まえ、公的年金の支給額の抑制が景気や物価に与える影響を新たに分析する方針だ。
公的年金はもともと賃金や物価の変動を反映する仕組みだが、過去の物価下落時に据え置いていたため、25年10月分(12月支払い)から1%、昨年4月分(6月支払い)から0・7%それぞれ引き下げられた。昨年4月の消費税増税分は年金額に反映されないため、実質受給額は短期間に5%弱も目減りした計算だ。
そのうえ今年4月分(6月支払い)からの年金受給額はマクロスライドが導入される。本来であれば、昨年の賃金上昇分2・3%が上乗せされるべきだが、0・9%分が差し引かれ、デフレ時のもらいすぎ分(0・5%)も削られる。日銀は、この影響ですでに「年金生活者の消費が鈍っている可能性がある」(幹部)と指摘する。
一方、日銀は「2年程度で2%」の物価上昇を目指しているが、昨年12月の消費者物価指数の前年比伸び率は増税影響を除き0・5%まで落ち込んだ。日銀関係者は伸び率の鈍化について、原油安に加え、年金生活者の消費意欲の低下も影響しているとみている。
年金を受給できる高齢者は人口の約4分の1を占める。日銀は、年金生活者の消費動向の調査・分析によって経済・物価の見通しの精度を高めたい考えだ。