九州電力川内原発。左から1号機、2号機=鹿児島県薩摩川内市【拡大】
もちろん、こうした潮流に批判の声は強い。元東大公共政策大学院特任教授の諸葛宗男氏(原子力研究開発政策)は「原発の安全性の判断は規制委が一元的に担う。それを裁判所が強制力を持って差し置くことは認められない」と指摘する。
「火力発電の燃料費増加がなければ、アベノミクス効果は1.5倍程度になっていた」。3月6日、大阪市内で開かれたエネルギーミックス(電源構成比)を考えるシンポジウムで地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾・システム研究グループリーダーは、こう報告した。
米エール大の浜田宏一名誉教授によると、金融緩和と財政出動を軸としたアベノミクスは国内総生産(GDP)を1.5%程度押し上げる効果がある。2013年度には、原発停止の影響で火力発電の燃料費が震災前に比べ3.6兆円(GDP換算0.7%)増えた。燃料費分のマイナスがなければ、アベノミクス効果が2.2%と1.5倍になっていたというのだ。
英では再評価の動き
実は、欧州で脱原発の動きが広がるなか、英国は原発が安定した電源として再評価されている。電気料金の引き下げを狙って1998年から順次電力販売の全面自由化に着手したが、電力事業者の過当競争が電力不安を招いたからだ。
2013年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の原発版といえる制度の導入を決定。原発による電気の基準価格を設定して卸市場での取引価格が下回ると差額を電気料金に上乗せして穴埋めし、原発を稼働する発電事業者が損をしない仕組みだ。同年には約30年ぶりとなる原発を新設することも決まった。
「福島の事故があったのに英国はなぜ原発に前向きかと聞かれる。電力不安を経験し、安定供給を保つ電源構成を考える重要性を国民も分かったからだ」。3月10日、大阪市内で講演した英国立原子力研究所のアンドリュー・シェリー主任研究員はこう説明した。