この発言と、前述のバイデン副大統領の「立ち上がる発言」とあわせてみると、中国の過度な拡張を封じ込め、アジア太平洋地域における米国伝統のヘゲモニーを守り抜こうとする国家的意思が固まったことは明白である。実際、2020年までに海軍力の6割をアジア地域にもってくるという米軍の既成方針は、まさにそのためにある。
問題は中国がこれからどう対処するかだ。現在のところ、習政権がアメリカに配慮して譲歩する気配はまったくない。5月31日のアジア安全保障会議でも、中国軍の孫建国副総参謀長は「われわれはいかなる強権にも屈しない」と宣言した。このままでは米中冷戦の本格化は避けられない。対立はますます激しくなる可能性もある。
しかし中国にとって、今の時点でアメリカと対決ムードに入ることは果たして「吉」なのか。国力が以前より衰えたとはいえ、今のアメリカには依然、中国を圧倒する経済力と軍事力がある。今後、アジアで米国勢と全面対決していくためには、習政権はいっそうの軍備拡大を急がなければならない。4月2日掲載の本欄が指摘しているように、ただでさえ中国経済が衰退し国の財政が悪くなっていく中で急速な軍備拡大は当然国の財政を圧迫して経済成長の足を引っ張ることとなろう。