日米欧の中央銀行の金融政策に方向感のバラツキが出てきた。日銀が19日の金融決定会合で、現行の大規模緩和の継続を賛成多数で決める一方、米国が12月に9年半ぶりの利上げに踏み切る姿勢が濃厚となり、欧州では12月に追加緩和に踏み切るとの観測が強まっているためだ。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は同日の記者会見で足元の経済が堅調なことを強調するが、市場では米欧の政策を見極めたうえで、1月に追加緩和に踏み切るとの見方も出ている。(飯田耕司)
日銀は決定会合で、国内景気の現状判断を「緩やかな回復を続けている」に据え置いた。
16日発表の7~9月の国内総生産(GDP)速報値は2期連続のマイナス成長になったが、黒田総裁は会見で「個人消費や輸出などの需要は増加している」と述べ、景気の回復傾向が続いていることを強調した。
マイナス成長となったことに対しては「設備投資の計画は上方修正された。計画の出方がやや遅れているだけ」との認識を示した。パリ同時多発テロの日本経済への影響は「現時点では限定的だ」とも述べた。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、12月の次回会合までに利上げ開始の条件が整うとの見方が大勢を占めていたことが18日に公表された議事録で判明した。一部には慎重論もあったが、米国の物価は中期的に2%の目標に向かって推移していると認識されているためだ。FRB内で利上げに踏み切る姿勢が強まっている。
欧州では、ドイツの9月の鉱工業生産が前月比1・1%の減少とマイナス幅が13カ月ぶりの大きさとなったうえ、パリでのテロ事件で年末商戦に悪影響が出ると懸念されるなど、経済の不透明感が高まっている。このため、欧州中央銀行(ECB)が12月に追加緩和に踏み切るとの見方が強まっている。