外国為替市場で円高ドル安が急速に進んだのは、米国の早期追加利上げ観測の後退や原油先物相場の下落、投機筋の動きなど、複合的な要因が背景となっている。市場関係者の間では、もし1ドル=110円を割り込めば、次は1ドル=105~106円近辺まで円高が進むとの見方がある。
イエレン発言と原油
根強い円高基調のきっかけの一つは、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が3月29日の講演で「金融政策の正常化は用心深く進めるのが適切だ」と述べ、追加利上げに慎重な姿勢を示したことだ。本来ならドル高要因となる追加利上げを急がない議長の考えが明らかになり、緩和的な金融政策が続くとの見方から、ドルを売って円を買う動きが広がった。
その後、米国で今月1日に発表された3月の雇用統計や3月の製造業景況指数といった重要な指標は総じて堅調な内容だった。しかし、「イエレン議長の発言が重しとなった」(銀行系証券)ことで、発表後はむしろ円高ドル安に振れた。
最近、原油先物相場が軟調になっていることも、投資家のリスク回避を通じて円高を後押ししている。