日本文化を海外に紹介する試み、一方通行では限界がある (2/3ページ)

2016.5.15 06:00

 このコースが設けられた背景には、日本酒について正確に説明できる人材なしに海外市場での日本酒の普及は順調に進まないとの認識に至ったからだ。「酒は熱燗だけ」「大吟醸が一番良い酒」等、基本的な情報がないところで紹介する人の「耳学問」と好みだけで酒を勧めるにも限度がある。

 酒を輸入販売する個々の民間企業がいくら宣伝に努めても、販売エージェントや現場で日本酒を勧めるバーマンやソムリエにその知識がなければ市場は開拓できない。このような事情をよく理解している岩手県の蔵元、南部美人は今回の教材に使う12種類の酒のうち5種類の酒を提供している。

 マドリッドから参加された日本人の方は、本拠地のカナダで日本酒を輸入販売している。売り先は仏料理や伊料理の店だ。彼がこう語る。

 「日本の利き酒師の資格もあり、酒に関する他の教育プログラムも見ていますが、WSETは分析的ですね。ベーシックな漢字の習得や日文化の理解も必要ですが、だからといって特に日本人だから有利という内容ではないところが、フェアな印象をうけます」

 日本サイドのバックアップがあるといえど、英国の協会が推進しているために日本の精神文化の強調がないのが良いのだろう。プログラム策定に関わった菊谷なつきさんにも、この点を聞いてみよう。

 「日本酒を一つの学問として論理的に確立し、欧州はじめワインに通じた国々で汎用性のある講座として展開していくことが、このコースの狙いです。 これまで精米歩合や銘柄名のみでしか区別されてこなかった日本酒の違いを、製造工程の技術やこだわりがいかに最終商品の酒質に影響を及ぼすかを3~4日かけて学んで頂きます」

 原材料や製造工程の流れを細かく学び、米の品種、酵母、軟水硬水、酒母、これらの要素が把握できるよう40種類以上のテイスティングを行う。それによって日本酒のスタイルや味わいがどのように影響されるのかを実感するのである。

SAT(Systematic Approach to Tasting)というワインや…

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