デザインが単にモノのカタチや色など意匠を指すだけではない、という認識は各国で定着しつつある。対象はビジネスだけでもなく、社会そのものにもなっている。
ぼくは従来の意匠としてのデザインを「小さなデザイン」、社会など大きな領域と概念を相手にするデザインを「大きなデザイン」と呼んでいる。ただ、デザインには「小さなデザイン」だけではないことは分かっても、「大きなデザイン」が実際にどんなものかがイマイチ実感できない、というのが一般的なところだろう。
では、こんな事例をご紹介すると、「ああ、なるほど!」と分かるだろうか?
イタリアの北東、ヴェネト地方にラーゴ社という家具メーカーがある。年商が40億円近くあり、従業員が200人程度の会社だ。この10年少々で10倍くらいに成長した。中東、中国、ロシアという新興市場が引っ張ったのではない。輸出比率は現在3割という数字をみれば明らかだ。
もともと何代か続いてきたファミリービジネスの会社だった。変わり始めたのはヒット商品がきっかけだ。
棚などの扉にガラスをはりつけたデザインが市場で受けたのだ。売り上げが上昇気流にのったが、2008年のリーマンショックで一時停滞期に入る。そこから持ち直したのは、「小さなデザイン」だけでなく、「大きなデザイン」にも力を入れ始めたからだ。