消費税増税の是非をめぐり、公明党は苦渋の決断を迫られている。増税が再延期されれば、社会保障の充実のために増税容認路線をとってきた党方針の見直しを余儀なくされるからだ。山口那津男代表は30日にも安倍晋三首相と会談する予定だが、幹部らの思いとは裏腹に党内は容認論に傾き始めている。
「政府・与党で決めた(来年4月に増税との)前提がある。まずは政府内でどうなっていくのか見守りたい」。山口氏は29日、徳島市内の党会合後、首相の増税再延期方針について記者団にこう強調した。
山口氏は5日前の24日に、首相から予定通りの増税方針を伝えられたばかりだっただけに、この日は「何も聞いていない」と述べ、怒りをにじませた。
増税が再延期された場合、公明党が重視する社会保障充実策の安定財源が課題になる。井上義久幹事長は「国民の安心という観点から実行すべきだ」と訴えるものの、財源を確保できなければ「福祉の党」の看板に傷がつきかねない。
首相にはしごを外された感もあるが、党内の本音は参院選を控え、「増税推進」のイメージ浸透を避けたいとの思いもあった。山口氏ら党幹部も、首相が26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の討議で世界経済の現状を「リーマン・ショックの前の状況と似ている」と指摘してから、増税の是非について慎重な言い回しに努めていた。
支持母体の創価学会でも「増税反対」の声は広がり、党幹部は「合理的な再延期の理由があれば、検討の余地はある」と話す。
消費税率を8%に上げた26年4月以降、消費が伸び悩んでいる現状も再延期容認論を後押しする。ベテラン議員は「社会保障のために経済を殺しては、本末転倒だ」と首相に同調した。