【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、カナダとの自由貿易協定(FTA)について従来の方針を転換し、批准手続きで加盟国議会の承認を求める方針を決定した。英国のEU離脱決定や反EU勢力の台頭を受け、加盟国で高まる「主権尊重」の圧力に譲歩を迫られた格好だ。
ユンケル欧州委員長は声明で「各国の首脳や議会の意見を聞いてきた。今、これを実行するときだ」と強調。カナダとのFTAについて加盟国の議会にも諮る意向を示した。
EUとカナダは2009年にFTA交渉を始め、14年半ばに合意した。貿易品目の99%以上で関税を撤廃するなど高いレベルの内容で、EUとして先進7カ国(G7)と結ぶ初の協定だ。10月にカナダと署名し、来年の発効を目指す。
欧州委は当初、法的検討を踏まえた上、批准は加盟国閣僚によるEUの理事会と欧州議会の承認で十分との見解だった。
だが、英国の離脱問題を協議した6月末のEU首脳会議で空気が変わった。仏独首脳が各国議会も批准に関わることを要請。オーストリアも強く主張した。
欧州委は各国の批准が済まなくても、FTAを暫定発効させる考えだ。