年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が平成28年4~6月期に約5兆2千億円もの運用損を出したのは、価格変動リスクの大きい株式の運用割合を高めたためだ。年金給付の財源は保険料収入と国庫負担で9割程度が賄われ、短期的な運用損は年金給付に影響しないが、国民の将来への不安を解消するにはGPIFのガバナンス(統治)体制整備が急務となる。
GPIFが株式への運用比率を高めたのは「運用が国債に偏ると運用目標を達成できない」(担当者)ことが背景にある。GPIFは毎年約5兆円を年金会計に上納。GPIFの運用資産約130兆円を超低金利下の国債ですべて運用すると25~26年しか持たず、その後は年金財政が立ちゆかなくなる恐れがある。
このため、年金積立金を長期的な視点の資産運用でいかに稼ぐかが、勤労世代や将来世代の給付水準維持のカギを握る。株式運用は短期的な収益のぶれは大きいが、一方で配当収入などを得られ「長期運用では収益を着実に積み上げていける」(GPIF)。
ただ、4~6月期のわずか3カ月で昨年度1年分に匹敵する巨額の赤字となったのも事実。赤字が続けば将来的に年金財政を圧迫すれる懸念は否めず、長く安全、効率的に資金を運用できる体制整備が欠かせない。意思決定の権限や責任が理事長1人に集中する体制を合議制に切り替えるなど、ガバナンス改革を早急に進めることが求められる。(万福博之)