
ケニアのケニヤッタ大統領(右)と共同記者発表する安倍首相=8月26日、ナイロビ(代表撮影・共同)【拡大】
《一方、キャッシュカードのマイクロチップを偽造した形跡を発見。ネット詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)の容疑も強まった》
結局、「中国人」は「大規模な国際詐欺集団」として裁判にかけられた。しかも、中国人に加え台湾人も一味だったことが発覚したが、中国人と一緒くたに中国に強制送還された。台湾当局が猛烈に抗議し、むしろ、この強制送還の方が注目された事件だった。
しかし、幾つもの不可解な点はいまだ解消されていない。
(1)高等裁判所は台湾人の台湾送還を命じたが、警察当局は台湾当局の引渡し要求を無視し、送還を強行した。
(2)ケニア外務省は事件直後、現地の中国大使を呼び出し、「中国政府が事態を事前に把握していたか」説明を求めた。ところが、だいぶたって《中国側が捜査の端緒をつかみ、ナイロビの拠点を突き止め、ケニア政府に協力依頼した。中国福建省公安局の捜査では、省内の女性が1億円だましとられた》との報道が唐突に流れる。
「国連」の二文字に戻る。小欄の興味は、犯行拠点の近くには国連ナイロビ事務局や米国大使館が所在する点。特に国連ナイロビ事務局は、ニューヨークの国連本部や国連ジュネーブ事務局、国連ウィーン事務局とともに、主要4事務局の一つだ。ナイロビ国連事務局がサポートする国連機関が、ナイロビに本部を構える《国連環境計画=UNEP》なのである。UNEPは、希少な野生動植物の国際取引を規制する《ワシントン条約》の管理も担う。