【社説で経済を読む】貿易戦争、その「根っこ」とは何かを考えたい (3/3ページ)

中国製品への制裁措置を指示する大統領令に署名するトランプ米大統領(AP)
中国製品への制裁措置を指示する大統領令に署名するトランプ米大統領(AP)【拡大】

 にもかかわらず、中国への投資が引きも切らないのは、13億人という巨大な消費市場への期待があるからだ。

 しかし、その巨大市場すら、独善的な手法で最後は外国資本を排除し、自らの胃袋にのみ込もうとしている。中国市場の将来性についても、冷静に判断すべき時期に来ている。

 米国の弱体化を象徴

 鉄鋼などに高関税を課す対象として日本が名指しされたのは、米通商拡大法232条(国防条項)に基づく措置だ。米国の安全保障を脅かす恐れがある場合に限定された条項で、同盟国への発動はそもそも立法趣旨に反する。

 欧州連合(EU)やカナダ、メキシコ、韓国などが対象から外れたことと考えあわせ、日本では、安倍晋三首相とトランプ氏の“親密な関係”が生かされていないではないかとする的外れな批判も多く聞かれる。

 しかし、同盟関係と通商問題を同一次元で考えること自体にもともと無理がある。

 トランプ氏には、とりわけ両者を峻別する傾向が強いように見える。読売は「現実を見据え、日本は通商戦略の立て直しが求められる」と書いているが、なにをいまさらの印象を拭えない。

 日本としては、まずは米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効を急ぎ、再び米国を多国間貿易協定の枠組みに引き戻すことだ。

 米国が日本を制裁対象にした理由は明らかだ。USTRのライトハイザー代表は、日本との2国間自由貿易協定(FTA)交渉に強い期待をみせているが、制裁解除をその条件にしてくる可能性は十分ある。日本はTPP11を軸に粛々と対応すべきだ。

 トランプ政権のなりふり構わぬ一方的措置は、実は「弱くなった米国」を示すものかもしれない。一連の制裁発動は、中国への警告にはなっても、世界経済の縮小という副作用が強く出るようなら、日米欧の離反要因にもなりかねない。そして、それこそが独裁体制を強める中国やロシアが待ち望む事態だ。