ネットでは「漢江に飛び込もう」が流行語に
なお、韓国では同事件以降にも、仮想通貨の暴落を引き金とした自殺、もしくは自殺未遂事件が、すでに数件にわたって起きていると報じられている。こうした状況ゆえに、韓国のネット掲示板では、暴落が起きるたびに「漢江(ハンガン)に飛び込もう」という言葉が流行語めいた使われ方をするようにもなった。漢江はソウルの中心を流れる大きな川だ。日本の掲示板などで時折書かれる「明日、電車が止まる」に近いニュアンスを持つ表現である。
1月下旬に発生した「仮想通貨脅迫状事件」も、韓国の世相を反映した事件だった。事件の容疑者として拘束された29歳の男性は、「旧正月の連休前までに1500万ウォン(約150万円)相当の仮想通貨を指定した電子ウォレットに送金しなければ、家族のうち一人を殺害する」という内容の脅迫状を、ソウル市内の70世帯に無作為に送りつけた。犯行の理由は、生活費を稼ぐため。のちの捜査で、男性は無職状態で金に困っていたことが明らかになっている。
仮想通貨を巡る大規模な詐欺事件も社会問題化している。昨年12月末には、「高収益を担保する」とマイニング機器への投資を持ちかけ、世界54カ国、約1万8000人から合計で約270億円をだまし取った国内詐欺グループが摘発・起訴されている。また3月上旬には、「新しくオープンする仮想通貨取引所に投資すれば何倍も儲けることができる」とかたり、人々から約30億円を詐取した一団が拘束された。そのほかにも、ICO(仮想通貨を使った資金調達手法)がらみの詐欺被害が続々と拡大傾向にある。
韓国大手メディアの記者は「仮想通貨の取り扱いにはかなり慎重になっている」と話す。
「もともと韓国では犯罪のなかで詐欺が占める割合が大きいのですが、仮想通貨はその傾向に拍車をかけている。韓国の大手新聞・メディアでは、仮想通貨の取り扱いにはかなり慎重になっています。企画会議で関連のネタがあがってきても、売買を奨励したり、仮想通貨市場にポジティブなスタンスを取ったりする内容だと、大抵ストップがかかる。政府や役所がにらみをきかせているので、デスククラスの人間たちが『忖度』をしている状況です」