5億人が屋外排泄の国で進むトイレ改革 設置しても「不使用」続々…立ちはだかる宗教の壁 (3/5ページ)


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 宗教的価値観の壁

 インドの家庭にトイレが根付かないのは理由がある。排泄とその処理が、インド最大の宗教、ヒンズー教の考え方と密接に関係するからだ。

 ヒンズー教では「浄」と「不浄」という概念が重視される。「トイレは不浄で遠ざけるべきものという意識は伝統的に根強い」と話すのは、インドで衛生環境の改善に取り組む非政府組織(NGO)、「スラブ・インターナショナル」広報のマノジ・ジャハ氏だ。農村部では家を建てる際にヒンズー教の僧侶がトイレを建てないことを勧めることもあるという。家から「不浄」を切り離すためだ。

 インド社会に隠然と残るヒンズー教の身分制度「カースト」も影響する。高位カーストが不浄な職に携わることは基本的にありえない。排泄物処理など不浄な作業は、基本的には下位カーストの仕事という認識が根強い。

 ガダワリ村のケースの通り、上下水道が整備されていない地域で、トイレはくみ取り式が多い。掃除や処分は「低カーストの人たちの仕事」という抵抗感から敬遠される。その結果、トイレを設置しても誰も管理しないため、使われなくなるケースは絶えない。

 政府の発表によると、クリーン・インディアプロジェクトで、14年10月には38%だった全国の自宅用トイレが、今年6月には86%に達したという。政府は成果を強調するが、専門家は「実際に使われているかは別問題だ」と指摘している。

「トイレが第一、寺院はその次」