■「トイレ改革」国際的なテーマに 中国では習氏が改善の大号令
トイレ改革はインドに限った話ではなく、世界各国で改善に向けた取り組みが進められている。国民の支持を得やすい身近なテーマであると同時に、対外イメージの向上にもつながるためだ。
中国では、指導部の大号令のもとで「厠所(トイレ)革命」が進む。習近平国家主席の肝いりの政策の一つで、公衆トイレの新設や改修を進めるほか、農村部のトイレを改善することで、衛生環境の底上げを図る。習氏は昨年11月、目標を上回る6万8000カ所のトイレが整備された状況を称賛。さらなる設置を指示した。
中国の公衆トイレは仕切りがなく、利用時に他の利用者と向かい合いになることから、「ニーハオ(こんにちは)トイレ」と揶揄(やゆ)され続けた。国際的な悪評を払拭して、観光客増加にもつなげたい考えだ。しかし、トイレに執心する習氏への忖度(そんたく)が行き過ぎたのか、ソファ付きの豪華な「五つ星トイレ」も登場し、「やり過ぎだ」との批判を集める事態にもなった。
バングラデシュはインドより前にトイレ改革に着手し、成功した国の一つだ。2003年に43%だった屋外排泄率を、15年には1%まで減らした。毎年、国の開発予算の4分の1をトイレ設置に使用。特に屋外で用を足すデメリットの周知活動に力を入れた。地元NPO関係者は「トイレだけ作っても意味がなく、教育こそ重要だ」と話す。
インドネシアでは1990年時点で、40%の国民が家庭にトイレを持たなかった。過去には衛生状態の悪さから5万人の死者が出ており、経済的損失は63億ドル(約7000億円)とも推計され、国を挙げたトイレ設置キャンペーンが展開されている。(インド・ガダワリ村 森浩)