【キャッシュレス革命(2)】中国「個人情報筒抜け」より利便性 外国人観光客らは“支払い難民”に (3/3ページ)

スマートフォン決済用の「QRコード」を掲げている中国・上海市内の焼き芋の露店(河崎真澄撮影)
スマートフォン決済用の「QRコード」を掲げている中国・上海市内の焼き芋の露店(河崎真澄撮影)【拡大】

  • 中国ではモバイル決済の利用が急速に伸びている

 商業ニュースサイト「中商情報網」によると、民間調査機関の中商産業研究院は、中国での今年の無人店舗による売上高が前年比3.3倍の330億元に急成長すると見通した上で、22年には9500億元に膨らむと予想する。

 中国の消費市場に詳しい野村総合研究所上級コンサルタントの郷裕(ごう・ゆたか)は「無人店舗などのビジネスモデルは、中国が日本に先んじている。その先行事例を人手不足にあえぐ日本に“輸入”することも一案だろう」と指摘する。

 支払い難民も

 ただ、中国に在住していない外国人や国外からの観光客にとっては、不便なシステムだ。原則として、中国の電話番号によるスマホを実名登録の上で保有し、決済用の中国の銀行口座を作る必要があるからだ。スマホを使いこなせない国内の高齢者やスマホを持っていない農村部の貧困層、出稼ぎ農民も“支払い難民”になっている。

 「何億人もの消費行動のビッグデータを分析することで、これまで最良とされてきた『市場経済』を超える新たな『計画経済』を目指す」

 アリババ会長の馬雲(ジャック・マー)は中国メディアの取材にこう宣言した。

 商品の需給という「見えざる手」で市場が自然と作られる時代に終止符を打ち、ビッグデータに基づき「見える手」で市場を作り上げる考えだ。

 消費者の身分や収入、家族構成などあらゆる個人情報が企業に“筒抜け”になってしまうが、多くの人民は「利便性の向上」を選んだ。そもそも、監視社会の共産主義国家では、幼少期から「個人情報の保護」という概念は養われないのかもしれない。=敬称略

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