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ボランティア休暇で社員成長 デサント社員が語る“副産物”とは?

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

ボランティア休暇で社員成長 デサント社員が語る“副産物”とは?

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ボランティアウォークイベントに参加した今本晴香さん(右端、デサント提供)  スポーツ用品大手のデサントは「スポーツボランティア休暇制度」と称するユニークな有給休暇制度を設けている。スポーツ用品メーカーだけに、同社には学生時代に競技者として活躍し、入社後も現役の選手やコーチなどとしてスポーツに関わっている社員が少なくない。そうした社員の“もう1つの顔”を社会貢献活動に生かそうというのがこの制度のねらいだ。しかし、そこには大きな“副産物”があった。

 社員の地域貢献活動をバックアップ

 この休暇制度を導入したのは平成15年。監督やコーチ、スタッフなどとして、ボランティアで各種の競技イベントに参加する際、年間12日以内で有給休暇を取得できる。

 勤続2年以上の社員であれば、誰でも取得できる。同社が後援、協賛するようなイベントの場合は、社内広報を通じて全社員に参加を呼びかける。

 同社の社員は約730。年間10人前後がこの制度を利用しており、地域の少年野球や少年サッカーチームのコーチ、バレーボールチームのマネジャーなど、活動は多彩だ。

 制度のねらいについて、檜物昌也(ひもの・まさや)人事課長は「社員が地域社会のために活動しているのを、会社としてバックアップすることです。社会貢献も企業の大切な役割ですから」と話す。

 社員2人が「トレイルウォーカー」に参加

 平成22年に入社した人事課の福田朋子さんと、海外事業統括チームの今本晴香さんは、5月11~13日に開かれた国際協力のためのボランティアウォークイベント「トレイルウォーカー」に参加するため、初めて休暇制度を利用した。

 神奈川県小田原市から静岡県小山町を経て、山梨県山中湖村までの約100キロの道のりを、4人1チームで足かけ3日かけて歩き続けるイベント。今本さんはウォーカー(選手)として、福田さんはサポート隊として参加した。

 標高差1200メートル、細い山道も多い難コースだが、スタートから48時間以内にゴールするという時間制限もあり、完歩は容易ではない。

 5月上旬とはいえ、朝の気温は10度を下回るため、福田さんは「選手がベストコンディションを出せるための環境づくりに気を使った」という。

 食材や毛布、レインコート、下着などの衣類はもちろん、路面状況に合わせて、1人あたり少なくとも2足の靴を用意。路面の状況なども調べたうえで、最適な靴をすぐ履けるようにする。

 大学時代にハンドボールの選手だった今本さんは、体力には自信があったが、「さすがに最後の20キロは足が重かった」と振り返る。残り20キロ地点で無性にレモンが食べたくなり、福田さんに依頼。福田さんは他のサポート隊とともに、コース沿いにあるスーパーやコンビニを探し、レモンを調達した。

 「自分にはもっといろいろなことができる」と仕事も前向きに

 今本さんは「この休暇制度でさまざまなスポーツイベントに参加しやすくなる」と話すが、この制度は単に休暇をとってイベントに参加する、というだけのものではない。

 社会貢献活動として、社員がボランティアでさまざまなイベントに参加することは、回り回って企業のイメージアップにつながる効果がある。

 しかし、もっと大きな効果は、社員を一回りも二回りも大きくするという、人材育成の面である。競技者として、あるいはサポート役として、立場は違うものの、お互いがお互いのことを考え、「自分は何をしたらいいのか」を考えるようになる。

 サポート隊を務めた福田さんは、選手といっしょに歩きながら、「選手が『この人になら頼みやすい』と思うような雰囲気をつくろう」と、笑顔を絶やさないようにしたという。

 さらに「選手のサポートをしながら、自分にはもっといろいろなことができるような気になった」と打ち明ける。イベントへの参加を機に、確実に社員は“成長”しているのだ。

 その後、福田さんには大きな変化があった。社内の会議などでも積極的に自分の意見を言えるようになり、仕事に対して前向きな姿勢で臨むようになったという。

 スポーツ競技は本来、自分の限界に挑戦するものという一面がある。この休暇制度は日常の仕事を離れた場所で、社員が新しい“自分”を発見する貴重な機会になっている。(松村信仁)

◇会社データ◇

本社=大阪市天王寺区堂ヶ芝1-11-3

設立=昭和10年2月

事業内容=スポーツウエアの製造販売

売上高=830億円(平成24年3月期)

従業員数=734人(同3月末現在)

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