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水産資源確保、大手商社しのぎ削る 漁獲規制で養殖強化

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水産資源確保、大手商社しのぎ削る 漁獲規制で養殖強化

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三井物産が手を組むチリのサケ養殖大手マルチエキスポートの水揚げ現場  大手商社が、相次いで水産資源の確保を強化している。三井物産が1月にチリでサケの養殖事業に乗り出すことで合意し、三菱商事や双日は昨年、アジアでエビの養殖事業に参画した。

 世界的な漁獲規制強化と需要拡大により、天然の水産資源獲得競争は激しくなっていることに対応、特に養殖事業に乗り出す例が目立つ。日本への安定供給先を確保すると同時に、需要が伸びている中国やアジア市場も開拓するのが狙いだ。

 三井物産は「水産資源で日本向けの安定供給が先細りしかねない」(北本晶英水産事業室長)とし、2011年に子会社に移管した水産事業を、昨年11月に本社の水産事業室として復活。第1弾として、今年7月にもチリの大手サケ養殖業者マルチエキスポートと新会社を設立、日本で人気のあるトラウトとギンザケの養殖に参画する。

 すしネタや切り身向けに加え、技術供与してスモークサーモンなども製造。日本だけでなく、中国やアジア市場でも拡販する。三井物産グループの日本配合飼料が飼料づくりから関わることで、安心・安全も確保する。

 サケ養殖の生産量トップは現在ノルウェーで、チリはその約半分の年50万トン規模だが、養殖のための海面に余力があるチリには他社も熱い視線を注ぐ。三菱商事は11年にチリの養殖会社を総額100億円で買収。丸紅も同国の提携先との関係強化を模索している。

 エビの養殖事業も盛んだ。三菱商事はタイの食品大手と提携して現地で事業化に乗り出したほか、双日もインドネシア企業と合弁で養殖事業を立ち上げた。背景には、中国でお祝いに欠かせないエビの消費量が急拡大していることがある。天然と養殖を合わせたエビの年間世界需要700万トンのうち、中国は4割弱を占め、この10年で2.2倍に増えたという。

 資源確保と同時に、販売ルートの確保も急ぐ。アラスカのサケ加工工場を買収した丸紅は昨年6月、オランダの水産販売会社を買収し、今後は最大市場の中国ルートも築きたい考え。

 世界の水産物需要は約40兆円で、このうち約5兆円が日本市場とされる。ただ、国内市場は縮小傾向にある一方で、すしブームや健康志向で米国や欧州市場は年率1~2%前後で成長。なかでも最大の20兆円とみられる中国市場は「中間層を中心にエビやマグロ、サケなどの消費が急増している」(大手商社)という。(上原すみ子)

 ≪大手商社による主な水産資源確保の動き≫

 三井物産 チリ大手とサケ養殖事業に参画

 三菱商事 チリのサケ養殖会社買収

      タイ食品大手とエビ養殖で新会社設立

 丸紅   米アラスカ州の天然サケ調達や加工工場を買収

 双日   九州でクロマグロ養殖。インドネシアでエビ養殖 

 豊田通商 近畿大と技術協力し九州でマグロ稚魚養殖 

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