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衛星携帯の林野庁調達で1円入札 タダ同然で契約…機器やソフトで元を取る?

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衛星携帯の林野庁調達で1円入札 タダ同然で契約…機器やソフトで元を取る?

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1円入札が相次いだ英インマルサットの衛星携帯電話「アイサットフォン・プロ」  KDDIが繰り返していた1円入札は、そのものが違法なわけではない。しかし、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いに目を光らせるほか、天下りや官民癒着の温床となったり、システム開発が頓挫したり性能を達成できないなど数多くの問題をはらんでいる。

 国内の衛星携帯市場は、2011年度で9万7000台に過ぎないが、東日本大震災後、非常時の通信手段として官民で需要が急増。「2桁成長が期待できる」(大手通信事業者)有望市場だけに、大手事業者によるコスト割れ入札がまかり通れば、健全な競争は成り立たない。

 1円入札が知られるようになったのは、富士通が1989年に広島市水道局のシステム開発を1円で落札したのが最初。その後、NECやNTTデータなど大手IT企業でも相次ぎ表面化。

 システム設計などを初年度にタダ同然で契約し、その後の機器やソフト開発で元を取る“ビジネスモデル”が業界で定着していることが露呈した。

 公取委は業界にその都度、改善を指導してきたが、当時の山本卓真富士通社長が「過当競争が悪いし、制度に問題がある」と言い放ったように、同様の超安値入札は繰り返されてきた。

 1円入札は調達コスト低減に寄与する面もあるが、コスト割れの入札案件で後に問題になるケースが多発。官公庁の技術審査能力の低さが露呈し、政府調達制度も再三見直されてきた。

 07年7月に施行された現行の「情報システムにかかわる政府調達の基本方針」では、調達予定価格の6割を下回った場合には契約が確実に履行できるかを調査する「低入札価格調査制度」を導入した。

 しかし、調査の主眼は事業者の申告による契約遂行能力であり、開発体制の不備や大幅なコスト割れなどの問題は対象外となる。

 総務省は「省庁が事業者の技術力を見抜くのは容易ではない。発注者側がまず業務内容を洗い出して整理すべきだ」(行政管理局)と指摘する。

 衛星携帯の調達案件の多くは端末と付属品が対象。システム開発や通信料金などの費用が別会計だったり、予定価格・最低価格を設定しないなど1円入札を誘発しやすい仕組みだ。緒に就いたばかりの市場の発展を阻害しないためには発注者側の努力も欠かせない。(芳賀由明)

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