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携帯大手3社、通信インフラ強靱化 気球や船舶など活用

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携帯大手3社、通信インフラ強靱化 気球や船舶など活用

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中継機能を備えたソフトバンクモバイルの気球。重さ約10キロの装置が取り付けられている=8日、愛知県稲沢市  東日本大震災を教訓に、携帯各社がユニークな手法で通信設備の増強を図っている。通信装置を気球に取り付けた「空飛ぶ中継局」や、通常より広範囲をカバーする「大基地局」、複数の電力供給源を持つ「無停電局」などだ。

 震災から2年近くが経過する中、各社は非常用電源車の配備など大規模災害に備えた緊急対策を終える一方、中長期的な取り組みとして技術開発も含めた通信インフラの強靭(きょうじん)化に力を注いでいる。

 ソフトバンクモバイルは8日、「気球無線中継システム」の実証実験を愛知県稲沢市で公開した。「通信衛星-車載の移動型基地局-気球の中継局-携帯電話・タブレット端末」の経路で電波をつなぎ、通信網を確保する世界初の試みだ。

 このシステムでは、気球から半径3~5キロメートルの範囲内で現在主流の通信規格「3G」(2.1ギガヘルツ帯)での音声通話やデータ通信が可能。公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」網も構築できる。

 実験では、震災で地上の基地局や中継局が倒壊したと想定。中継装置を搭載した気球を地上から約100メートルの高さに飛ばし、電波の中継に成功した。

 「被災地に機材と数人の技術者が着けば、4時間程度で通信網を作れる」(藤井輝也ワイヤレスシステム研究センター長)といい、同社は今月中にシステムを全国10カ所に配備する。

 一方、KDDI(au)は船舶に携帯基地局を置く「船上基地局」を計画。陸上の基地局が復旧できない場合、通話音声やデータを洋上で送受信する。既に技術開発を終え、2013年度内の実用化を目指す。

 さらに太陽光発電パネルと蓄電池、商用電源の3つを制御して充電を随時行う「トライブリッド基地局」で、災害時も電力供給が途絶えないようにする。現在の約80カ所を今月末までに100カ所に増やす計画だ。

 この日、同社は直下型地震を想定した災害対策訓練を東京臨海広域防災公園(東京都江東区)で実施。車載型や可搬型の基地局を素早く設置し、通信網を確保する作業に取り組んだ。

 NTTドコモは人口密集地の通信を確保する「大ゾーン基地局」を既に国内104カ所に設置。通常は半径100メートルから数キロ内とされる基地局のカバー範囲を半径7キロメートルに広げている。

 携帯電話などは「ライフライン」の一つに位置づけられるだけに、総務省も通信設備の増強を補助金などで後押しする。

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