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市民マラソンで和気あいあい 組織の壁を越えて盛り上がる伝統行事

ニュースカテゴリ:企業の経営

市民マラソンで和気あいあい 組織の壁を越えて盛り上がる伝統行事

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 新入社員に厳しい研修を課す企業が多い中、毛紡績最大手のニッケでは、印南工場(兵庫県加古川市)に配属された新入社員は、地元で開かれる「加古川マラソン大会」に出場するのが伝統になっている。同大会では5キロと10キロのレースへの出場者が大半だが、中には、フルマラソンを走りきった“猛者”も。マラソンはよく人生にたとえられるが、それはサラリーマン生活でも同様。苦しみを乗り越えた達成感は、社員を一回り大きくするとともに、職場の「和」にも大きな効果をあげている。

 同期の社員と和気あいあいの雰囲気に

 「マラソン出場をきっかけに、『同期』とも和気あいあいとした雰囲気になりました」

 平成20年に入社した同工場整理課仕上係長の末岡孝之さん(31)はこう打ち明ける。

 同工場には毎年、大卒と高卒の新入社員が計6、7人配属されるが、大卒と高卒では年齢が4歳以上違うため、「最初は互いに距離感があった」とか。

 とくに末岡さんは大学に8年在籍したため、入社時にはすでに26歳。さすがに8歳も年下の高卒社員となると、どちからも会話は弾まなかったという。

 末岡さんは同工場への配属早々、マラソン大会に出場するよう先輩社員から告げられた。

 “出場命令”に、最初は「えーっ、まじ!?」

 長距離を走った経験はほとんどなかったが、「先輩に言われて5キロや10キロ走るくらいなら、いっそフルマラソンに挑戦しよう」と、持ち前の負けん気が頭を持ち上げ、仕事への支障を心配する職場の意向を押し切って出場し、4時間45分で見事に完走した。

 もっとも、“楽勝”だったわけではない。走っている最中にしんどくなり、何度もあきらめかけたという。しかし、そこを踏ん張ってなんとか完走。「達成感も沸いたし、高卒の仲間たちとも盛り上がりました」と振り返る。

 大阪、神戸、京都で相次いで市民マラソン大会が始まるなど、近年、関西でも開催が増えてきたが、毎年12月23日に開催される加古川マラソンは23回の歴史を誇る伝統ある大会。昨年は5千人の参加枠が募集開始5日間で埋まるほどの人気だった。

 「最初は同期のみんなと『えーっ、まじ!?』なんて文句を言い合いましたが、お祭り騒ぎのような雰囲気で楽しめました」と、うれしそうに語るのは、昨年入社した同工場総務課の高橋早恵(さえ)さん(23)。

 高橋さんは普段はほとんど運動とは縁がなく、それこそランニングシューズから購入した。しかし、大会が近づくにつれ、他の同期たちと「靴買った?」「ウエアどうする?」など、次第にコミュニケーションが増えて仲良くなっていったという。

 大会では5キロに出場。「完走できるかと不安もありましたが、参加者の中には仮装して走っている人もいて、意外と楽しく走れました」。終わってみれば約28分で完走した。

 大会が終わっても“マラソン談義”は続く…

 加古川マラソン大会はニッケグループが特別協賛しているが、「新入社員の出場は強制ではありません」と同工場の神吉(かんき)孝昌総務課長。

 しかし、なぜ、新入社員がマラソン大会に出るようになったのか…。

 「はっきりした理由はよく分かりません」と神吉課長はいうが、7年ほど前、ある新入社員が出場したいと、当時の総務課長に相談したのがきっかけで、いつの間にか工場の“伝統行事”として、後輩に受け継がれるようになったという。

 以来、大会への参加費(5、10キロは3千円、フルマラソンは5千円)は会社が負担する。大会当日は天皇誕生日で祝日だが、同社の工場は生産効率を維持するため、週末を除き連続操業する。その中で、印南工場だけは23日が週半ばにあたっても特別に「休日」になる。

 他工場での勤務経験もある神吉課長は「大会が終わってからも、年末までマラソン談義で工場中が盛り上がり、楽しそうな雰囲気になります」という。マラソン大会は組織の壁を越えて工場の一体感をはぐくむ、貴重なツールになっているようだ。(藤原章裕)

◇会社データ◇

本社=大阪市中央区瓦町3-3-10

設立=明治29年12月

事業内容=毛紡績業

売上高=973億円(平成24年11月期)

グループ従業員=4583人(同期末)

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