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社長から突然届く「ホメホメメール」 社員のやる気を引き出す小林製薬
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社長から「ホメホメメール」をもらうと、「ほめほめプレート」と呼ばれる盾が贈られる(中村智隆撮影) 消臭芳香剤「消臭元」、レンジで焼き魚が調理できる「チンしてこんがり魚焼きパック」…。独特の商品のネーミングとともに、斬新な商品で消費者を驚かせる小林製薬。そのユニークな商品を生み出す源泉は、社員の高いモチベーションにある。そして、それをもたらしているのが、経営トップが社員に直接メールを送って、その実績をたたえる「ホメホメメール」などの評価制度だ。社員のやる気を引き出す秘訣は「信賞必“誉”」にあった。
このホメホメメール。平成8年に当時の小林一雅社長(現会長)が導入した。
ある日突然、社員に社長からメールが届く。その内容も簡単なものではない。メールを送る前に、社長はその社員に関する詳細な情報を上司から入手し、具体的にその社員の業績をたたえる。
今年1月、ある営業担当チームに小林豊社長からメールが届いた。そのチームは小売店での芳香剤などの陳列のしかたなど、新たな商品展開を提案した。これが功を奏して売り上げがアップ。小売店も喜び、小林社長は「小林製薬のブランド価値向上につながった」とホメホメ。
「社長がこんなに自分のことを見ていて、しかもほめてくれた…」。もらった社員はもちろんびっくり。普段、社長と接する機会などほとんどない社員に、突然こんなメールが届いたら、感動しない社員はいないだろう。このメール、多いときには月10件に上ることもあるという。
このメールはほかにも効用がある。社長に情報を提供するために、上司は自然、部下の業務に細かに気を配るようになる。社員のモチベーションを高めるだけでなく、「管理職のマネジメント能力の向上にも役立っている」(広報担当者)という。
同社のホメホメはこれだけではない。
このメールが、いわば“他薦”なのに対し、“自薦”のものある。それが「青い鳥カード」と呼ぶ評価制度。
社員が自分自身の業績や取り組みについて、「褒めてほしい」と“立候補”するものだ。認められれば、社内表彰の対象になる。立候補件数はホメホメメールの数より多いという。
そんな…、自分で自分を表彰してくれとは…。
フツーの日本人ならためらうのがもっともだが、そこを前向きに突くのがこの制度のねらい。制度として導入し、社内がそれで当然という風土にしてしまえば、誰も遠慮しなくなる。むしろ、“内に秘めたやる気”を引き出すことになるというわけだ。
このホメホメメールと青い鳥カードの裏にあるのは、信賞必罰ならぬ「信賞必“誉”」の精神。
業績を上げれば、とにかく経営トップが社員をほめる。そうすれば、社員も自然「ほめられたい」と思って、仕事に邁進(まいしん)する。このいわば単純な論理で人を動かし、それが好循環を生んでいる。
ホメホメメールは現場の管理職の推薦で対象者を決め、青い鳥カードで上がった対象者も、その上司が推薦する。
ここで大切なのが、管理職は「見張る」のでなく、「見守る」という姿勢だ。青い鳥カードでは、自薦に値すると上司が判断すれば、部下に立候補を促すこともあるという。こうした雰囲気ができあがっていれば、社員は前向きに仕事をするようになる。
制度の対象者やその業績は社内報などに掲載されて、社員全員に知れ渡る。「それを見た別の社員が奮起して、新たな商品開発などにつながってくれれば」(同)と期待する。
「人はほめて使え」とは、人身掌握術の1つだが、こんなふうに上からも下からも“ほめる”空気をまん延させて、やる気を出させる。そして、そうしながら、一方で公正で正しい評価につなげようというねらいもある。
かの山本五十六(いそろく)の名言「ほめてやらねば、人は動かじ」を地でいくようなこの制度。遊び心たっぷりのユニークな商品を生み出す同社の原動力は、間違いなくここにある。(中村智隆)
本社=大阪市中央区道修町4-4-10
設立=大正8年8月
事業内容=医薬品、医薬部外品、芳香剤などの製造販売
売上高=1311億円(平成24年3月期連結)
従業員数=2414人(同3月末)